日本海に面し、海と山どちらの魅力も有する福井県。2024年には北陸新幹線が延伸し、東京から乗り換えなしで3時間以内でアクセスできるようになることから、ワーケーションだけでなく観光面でも大きな注目を集めている。
あわら温泉や東尋坊など観光に目が行きがちだが、実はワーケーション地としての複合的な魅力を持つ地域でもある。弊会の公認ワーケーションコンシェルジュ認定者数が最も多いエリアとなっているのはそのためとも言えるだろう(2023年3月時点)。
そんな福井の多様な魅力をお伝えするため、今回は3月9日から11日まで2泊3日で行われた、福井県のワーケーションの様子をご紹介する。
■多様な魅力を持つ福井県
レポートの前に、まずは福井県の概要と位置関係、県としてのワーケーションの取り組みについてお伝えしたい。
福井県は近畿地方との境に位置し、主に以下4つの地域に分けることができる。
日本海に面している地域では海の幸やマリンスポーツなどを楽しめるほか、内陸部は豊かな緑に囲まれており冬にはウインタースポーツが可能だ。文化施設や歴史的建造物もそこここに見られる。
また眼鏡、繊維、漆器など多様な産業が盛んな地域としても知られており、中には国内や世界で高いシェアを誇るものも。産学連携の取り組みも進んでいる。
また前述したとおり、福井県には7名の公認ワーケーションコンシェルジュが在籍している。
公認ワーケーションコンシェルジュとは、弊会が目指す「リモートワークやワーケーションの先にある5年後、10年後の新たなワーク&ライフスタイル」というビジョンを共にし、共創できる方を公認した制度だ。
公認ワーケーションコンシェルジュの数の多さは、そのまま地域の魅力の多様性に比例するといえる。こうした観点からも、一言では語れない福井県ワーケーションの地域性がおわかりいただけるのではないだろうか。
■福井県ワーケーションの旅程と参加者
今回の2泊3日の旅程は「福井の⾵⼟を知り、まちづくりを学ぶ」をコンセプトに、こうした福井の特徴や多様な魅力が感じられるワーケーションとなっている。
その足取りを追いながら、福井県各地のワーケーションの真髄を探ってみよう。
▼来訪者を意識した工夫とまちづくりを学ぶ1日目
スタートは北陸新幹線が延伸するJR福井駅。実施当時は開通に向けた準備が着々と進んでいた。
今回ワーケーションには、北陸および関東に拠点のある3名が参加した。
樋口 謙之介さんはJR東日本企画に所属。佐渡ヶ島でSADO PORT LOUNGE(サド ポート ラウンジ)というコワーキングスペースを運営している。廣畑 佑樹さんはフリーランスの建築士として活躍しながら、2022年にはJR西日本が実施する「地域ものがたるアンバサダー」として福井県を何度も訪問した経験の持ち主。小池弾さんはサイバーセキュリティ等の事業を行う会社の取締役として、普段からワーケーションを行っている。以前はコワーキングスペースの運営にも携わっていた。
一行は道元が開いたとされる”禅の里”永平寺へ。1244年に創建された永平寺は観光地としても知られるほか、日帰りや一泊二日で参禅体験ができる。こうした内容を盛り込んだワーケーションプランも作られている。
今回は永平寺の境内を拝観させていただくことに。斜面に沿って建つ独特の建築技術や底子に見られる歴史の面影、厳かな雰囲気の中で静かさや自然の音を楽しむ体験は、それだけでも心にやすらぎを感じられるものとなった。
また社務所をあえて見せるなど、これまで観光を受け入れてきたからこその工夫も。参加者からは「袈裟を着た僧侶の方々がパソコンに向かって仕事をしている姿をみると、仏教そのものに親しみを感じられる、素晴らしい工夫」といった声が挙がった。
<施設情報>
大本山永平寺
住所:福井県吉田郡永平寺町志比5-15
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心安らいだあとは地元の方がおすすめする「けんぞう蕎麦」へ。
平日ながら満席の店内でほおばる、打ち立ての十割そばはうまいの一言。地元の方が紹介する食を楽しめるのは、地域とのパートナー性を重視するワーケーションならではかもしれない。
<施設情報>
けんぞう蕎麦
住所:福井県吉田郡永平寺町松岡春日3-26
定休日:月曜(祝日の場合は営業)
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その後は福井市内にあるコワーキングスペース「CRAFT BRIDGE」で約3時間のワークタイム。かつては市内の花街として料亭が立ち並んでいたエリアに建つCRAFT BRIDGEは、2階と3階がワークスペースおよびレンタルスペースとなっている。
同建物の1階には日本酒バーが併設している他、3階には運営メンバーがコーディネイターとして常駐。福井市出身でこの施設を経営する高岡 勇治さんは、福井市で人が集まる場作りを行っており、「この場所を通して福井を楽しんでほしい」と語る。周辺の飲食店情報や交流を求めたい人にとって、その起点となる場所になり得ることも、参加者にとって学びになった様子だ。
<施設情報>
CRAFT BRIDGE
住所:福井県福井市中央 3丁目5-12
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ワークを終えた後は1日目の宿となるホテルエコノ福井駅前店へ。福井駅から徒歩1分という利便性もさることながら、施設内にコワーキングスペースが設置されており、宿泊者は無料で利用できる点はワーケーション実践者にとってうれしいポイントだろう。有料になるが会議室もあるので、必要な場合は利用してみてはいかがだろうか。
<施設情報>
ホテルエコノ福井駅前店
福井県福井市日之出1-1-17
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この日の食事は、これまた地元の方のおすすめである「やきとりの名門 秋吉」へ。焼き鳥は一人1本程度頼むイメージがあるが、こちらでは一種類につき数十本単位で注文をするそうだ。参加者も早速注文。席の中央に置かれた鉄板に、次々に焼き鳥が運ばれてくる。
こんなに食べられるの…?と不安になるが、意外とぺろりといけるもの。この不思議な感覚はぜひ現地で味わってほしい。
<施設情報>
やきとりの名門 秋吉 福井片町店
住所:福井県福井市順化2丁目7−1
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▼地域の魅力、住む人の魅力を体感する2日目
2日目は30分ほど移動し、鯖江市にある越前漆器伝統産業会館へ。
1500年もの歴史を誇る鯖江市。現在日本の漆器の売上では日本一を誇り、業務用漆器の里ともいわれる。
今回は公認ワーケーションコンシェルジュの竹部 美樹さんご案内の元、鯖江の伝統工芸品である越前漆器の歴史や現在に至るまで需要が高い理由などについて解説いただいた。
<施設情報>
越前漆器伝統産業会館(うるしの里会館)
住所:福井県鯖江市西袋町40−1−2
HP:https://www.echizen.or.jp/urushinosatokaikan
その後は自社で販売も行う3つの漆器屋を訪問。それぞれ個性や魅力は異なるものの、いずれからも鯖江漆器の高い品質とデザイン性、現状維持でなくチャレンジしていくという姿勢が強く感じられた。
その後は地元の料亭がプロデュースするカフェ「茶癒SaYu中松」で昼食をとり、竹部さんが運営する複合施設「La Tempo」へ。こちらはカフェとホステルを併設したコミュニティスペースだ。
ここでは午後の目玉コンテンツであるイベント「これが福井だ!ビックリ福井の大集合! 福井ワーケーションコンシェルジュサミット2023」に参加。
福井県を拠点に活動する公認ワーケーションコンシェルジュ7名が一同に介し、各地の魅力を紹介した。高浜の浅野容子さんはオンラインでの参加となりましたが、実は7名が集まってイベントを開催するのは今回が初!
イベントではそれぞれの活動を通した福井各地の魅力、また皆様の地域に根ざした取り組みが紹介された。その地に住む各地のプレーヤーから地域の情報や事例を聞ける機会はなかなかないこともあり、メモを取りながら真剣に聞き入る参加者の姿も見られた。
多様な事例が紹介される中、印象的だったのは「福井の魅力は言語化しづらい」という言葉だった。実際に足を運んでみて初めて体感する魅力が、福井には多いのかもしれない。
この言葉にワーケーション参加者も納得している。
樋口さん:福井県ワーケーションに参加して1日半が経ちますが、イベントでの皆さんの話を聞いて、その中で感じてきたことの意味が何となく腑に落ちた気がします。
これだっていうものはなくても、こういう雰囲気がいいんだよねっていう、言語化できない福井県の「いいよね」をすごく感じてきたんだなと。すごくマニアックで、体感しないとわからない魅力なんですよね。
廣畑さん:今日伺ったお話は、地域ものがたるアンバサダーとしての福井での活動にシンクロしていたので、自分にとってこれまでの体験の総決算のようなイベントでした。
以前、長野県須坂市で観光に関するワークショップに参加した際に、チームで「観光ではなく感考しよう」という発表をしたことがあります。これはチームで考えた造語ですが、来訪先の空気感や魅力を感じて自分なりに考える、人生の経験になり得る新しい旅のことを指します。
最初からその場所が好きで来訪するのではなく、言ってみたら自分が見つかるような素敵な旅ができた。今回のイベントで皆さんからお話を聞いて、福井県にもそれが当てはまるんだということが、すごく実感できました。
ちなみに今回のイベントには、 探究授業の一環としてワーケーションを学んでいる地元の高校生が一人で自主的に参加していた。 未来を作り上げていく若者たちが、こうして今地域を盛り上げるプレーヤーたちと自然と関われるのも、 福井県の方々からにじみ出る親近感によるものなのかもしれない。
<施設情報>
La Tempo
住所:福井県鯖江市本町1-3-19
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▼地域の課題と取り組みを感じる3日目
参加者はその後、会場となったLa Tempoに宿泊。3日目は敦賀市に移動し、イベントにも登壇した後藤美佳さんが経営するリハーサルオフィス「FUJIONE WORKATION PLACE(フジオネワーケーションプレイス)」へ。ここでは後藤さんの取り組みについて学び、意見交換を行った。
ここでは特に、後藤さんが代表を務める「ふくいテレワーク女子」について、その成り立ち経緯や現在も抱える課題感などを共有いただいた。
この施設や活動はあくまで手段であること、目的はこれまでの「当たり前」に縛られるのではなく、生き方は個々人が自分でつくる、つくれると自ら言えるような文化の醸成を目指すという後藤さんのお話に、深く耳を傾ける参加者たち。それぞれが自分ごととした中での活発な意見交換も行われた。
<施設情報>
FUJIONE WORKATION PLACE(フジオネワーケーションプレイス)
住所:福井県敦賀市本町1丁目15−3
HP:https://fujioneworkationplace.studio.site/
■福井ワーケーションの魅力とは
福井の風土やまちづくりはもちろん、そこに住む人の取り組みや体感してこそわかる福井の魅力について五感で学ぶことができた今回のワーケーション。業種や参加背景も異なる3名だったが、それぞれが自分ごととして今回のワーケーションを楽しみ、また学びを得たようだった。
食、環境、そして人。福井にはその土地にしかない魅力はもちろん、それを伝える人の存在が光る地域なのかもしれない。
福井県では今後もワーケーションに力を入れていくという。新幹線開通を機に、ぜひ一度福井県に足を運んでみてはいかがだろうか。
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